nananashinaの日記

禁欲・禁酒で人生を立て直す

日報19日目 青い春

昼休みに青柳に呼び出されて屋上へ行くと3年の上木と本間と田村が居てこちらを睨みつけてくる。

最近テメー調子こいてるから潰そうと思って、と上木は赤く染めた髪をかき上げて言う。

昭和の不良中学生かよ。

だが実際、今は昭和63年の10月20日であり、昭和だった。

 

屋上の手すりの向こう側に行く。

手すりを握り、身体を後ろに倒す。

背後には何もない。

振り向けば5階の高さから見下ろした学校正面玄関が見える。

人の頭がムギチョコくらいの大きさに見える。

車がおもちゃのミニカーみたいに見える。

 

ここで手を離したら、落下して、死ぬ。

 

頭の後ろがサーっと冷えていく。血が抜けていく感覚。

 

上木が隣に来る。

上木も手すりを握り、空中に身体を反らす。

 

赤い頭とその背景の真っ青な深い空とのコントラストが強烈だ。

 

松本大洋の描いた漫画『青い春』。

その中に出てきたゲームをやろうと上木は言う。

 

身体の重心を後ろにしたまま、一旦、身体を手すりに引き寄せる。

そして、手を離す。規定量、パンパンと拍手をする。そして手すりを掴む。

 

規定量が増えれば増えるほど、身体が手すりから離れていく。

下手をすれば、屋上から落下する。

 

規定量は1ずつ増えていく。

ギブアップした奴が負け。

 

いーち。

パン。

手すりを掴む。

 

少し、でも確実に、身体は後ろに傾いた。

死に近づいた。なんでこんな馬鹿なことをしているんだ?

 

にー。

パンパン。

慌てて手すりを掴む。

塗装が半分剥げてざらついた手すりを、強く握りしめる。

 

さっきよりも確実に傾いた。死へ向かって。本当に死んだらどうする?

 

さーん。

パンパンパンっ!

手すりを掴む。親指が届かなかった。

4つの指が手すりに引っかかっただけだった。

 

さっき、一瞬、無重力が感じた。

次は無いと思った。

次は、手すりを掴むことができない、そう思った。

 

俺は隣の上木を見た。上木は平気な顔だった。

 

俺は、ギブアップ、と言う。

上木は、ダメだ、と言う。

 

次やったら落ちる、と俺は言う。

落ちろよ、と上木は言う。

 

馬鹿いうな、と俺が言うと、青柳がにやにやしながら近づいてくる。

そして、手すりを掴んでいる俺の指を広げ始める。

俺は青柳を蹴る。でも足場が狭いので力が入らない。

青柳はにやにやしながら指を引き剥がそうとする。

 

上木が言う。

 

ギブアップするなら、落とすぞ。

 

禁欲・禁酒 19日目。

 

そんな夢を見た。

ひどい夢だが、現実的な内容でもある。

こんなことは実際には起こり得ない、などということはない。

 

一回間違えば真っ逆さまのシビアな瞬間。

 

googleの検索窓に『FC2動画』『dmm』と打ち込めば、ただそれだけで、このブログは終わる。

 

ギブアップ、と俺は言う。

ダメだ、と俺の中の上木が言う。