nananashinaの日記

禁欲・禁酒で人生を立て直す

戦闘13日目

平日は禁欲・禁酒が余裕である。

仕事のストレス値が高すぎて、興奮しようとか飲もうという気が起きない。

しかも明日も会社だと思えばなおのことである。明日のためにさっさと寝たい。

 

中途半端にエネルギーが残っていたり、時間が余ったりすると、危ない。

虐げられている社畜プレイの反動で、理性を吹き飛ばすような欲望の爆発が起こることがある。

 

ところで。

 

断酒会というものがある。参加したことはない。

同じようなもので、断性会というものはないのだろうか。

 

断性会

会場の入口で受付を済ますと、大きな紙袋を手渡される。

この紙袋には二つ穴が空いていて、それは覗き穴である。

紙袋を頭から被る。案内に従い、会場内に入っていく。

 

大ホールには紙袋を被った老若男女で溢れている。

怪しげな感じを受けるが、コミカルでもある。

なにせ、気が楽だ。リアルなのに匿名性が確保されている。

 

断性会が始まる。

 

性の苦しみ、誘惑に負けた失敗談、誘惑に勝った武勇伝、リセット体験談、長期間禁欲のノウハウ、戦いの日々の告白、セクリセ体験談……色々な種類の告白が、壇上から発表される。

 

一つ一つの発表が終わるたび、大拍手があり、質問タイムも盛り上がる。

 

男性だけではなく、女性の告白もあり、僕はそれを聞いて興奮してしまう。

というか、なんというか、これはただの下ネタ発表会ではないだろうか。

 

彼氏とのいちゃラブ生活を生々しく発表する女性。

人とは違うフェチに悩む女性の告白。

 

……おかしい。

なにか変だ。すごく、おかしい。

 

僕は退座する。

受付に行き、用事があるので退出します、と言い、紙袋を返す。

 

喫茶店。

紅茶を飲みながら、さきほどの違和感について考えていると、正面の席に女性が座る。

 

満席というわけでもない。どういうことなのだろうか。

 

「すみません、後を追いかけてしまいました」

 

え?

僕は顔を上げて女性を見る。若い彼女は恥ずかしそうに目を反らす。

 

「さきほどの会に、私もいたのです。そして、私もやっぱり退座したくなったものですから」

 

はあ。

僕は気の抜けた返事をするより他ない。

 

「正直、どう思います? あれはちょっと違うなと思いませんでした?」

 

まあ、思いました。

思っていたのと違うなあと。

 

「ですよね。なにせ、ストイックな感じがないじゃないですか。

 あれじゃ、体育会系の下品な飲み会と同じですよ」

 

ですね。

 

「気が合いますね」

 

はあ。

 

「あの」

 

はい。

 

「お願いがあるんですが」

 

はあ。

 

「私たちでもっとストイックな集まりを作りませんか?」

 

ストイックな?

 

「管理です」

 

管理?

 

「会員同士がお互いを徹底的に管理するんです。ウェアラブルデバイスを使って。

 お互いの性的行為の禁止を管理し合うんです」

 

……はあ。

 

「もしも裏切ったりしたら、そのときは、ひどい罰を受けてもらいます」

 

……。

 

彼女はそう言い、よくわからない、黒い、長い、ゴムのような材質のものをカバンから出す。

 

「こういうの、興味ありますでしょ?」

 

そう言って、彼女は笑ってない目を光らせて、涼しげに笑ってみせる。