nananashinaの日記

禁欲・禁酒で人生を立て直す

9日目 このあと滅茶苦茶ックスした

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待たせたな……

(深い意味は特にありません)

 

 

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このあと、5ページほど漫画を描いたのですが、漫画じゃなくてただのエロ漫画になりました。

エロ漫画家になる…… そういう人生のルートもあるのかな、と思いました。

(ちょっと頭がおかしくなってきている) 

 

というより、近辺のオナ禁ブログ群を見てみると、絵描き属性の人って少ないような気がします。

もしかしたら、絵描き属性かつオナ禁というのは、相反するのではないか。

アクセルを踏みながらブレーキを踏む、みたいな。

 

動きたいのか止まりたいのか。

欲望のまま生きたいのか欲望を捨て去りたいのか。

 

世の中には色々な禁欲ブログがあるが、『お絵描き属性+禁欲』というのは、初期条件からして矛盾を抱えているのではないか。

3日目 しあわせのかたち

庭から僕を呼ぶ妻の声が聞こえた。

キッチン台の上にある球根を持ってきて欲しいと妻は言う。

 

球根は豆腐のビニール容器に水没していて青白い芽と根を出していた。

僕はそれを持ってバルコニーから外へ出る。

 

今日は12月7日なのに春みたいな天候だった。

雪国と言われる新浜県なのに、今年はまだ一度も降雪がない。

挙げ句の果てには今日の室内温度は21℃に達している。

 

「異常気象なのだけど、むしろ嬉しい限りです」と妻は言う。

妻の足元には2人の子供がまとまりついていて、妻を中心にくるくると公転している。

 

携帯電話が震える。

折りたたみの携帯(僕はスマートフォンが苦手だ)を開くと母親からだった。

 

「あんた今何してると?」「ええと、庭仕事、かな」「栗おこわ作ったから取りに来れるか?」「行ける行ける」「じゃあ、今から来い」

 

プツっと電話が切れる。

 

「誰から?」「お母さんから。栗おこわ作ったから取りに来いってさ」「えー、すごい。お母さんの作った栗おこわすごくおいしいから好きです。プロみたいだから」「まあ、実際、プロだしなあ」

 

僕の母親は専業農家だ。そして、それを食材にしてなんでも作る。

それを市場に売ったり地元のスーパーで売ったりしている。

(ちなみにスーパーではバーコードの下に母親の名前が表記されている。まるで人間を売ってるみたいだ)

 

「ちょっと取りに行ってくる」

 

僕は車に乗り込み、エンジンを掛ける。

カーナビにDVDが入っていて勝手に再生される。DVDは劇場版のポケモンだった。

 

空は気持ち悪いくらいの青空だった。

申し訳程度に雲が浮かんでいる程度だった。

 

今、僕は幸せだろうか?

 

幸せな家庭。借金をせずに建てた一戸建て。母親も父親も元気。

仕事も上手く回っている。僕はまだ若い。子供は健康。妻も僕も健康。

 

今、僕は幸せなんだ。

幸せっていうのは、こういうものなんだ。

 

 

ウイスキーをコップに注いだ。琥珀色が怪しく揺らめいた。

 

会社から狭いアパートに帰り、蛍光灯の電気を点ける。

淀んだ空気と光景が眼下に広がる。僕はパソコンを立ち上げ、艦隊これくしょんを始める。

 

艦隊これくしょんはゲームである。

やや人気の全盛期は過ぎたが、オタク界隈ではまだ話題の中心になっている。

 

僕は独身だ。彼女もいない。

 

艦これとウイスキーは合う。僕は服を着替えながらマウスをクリックする。

艦これを遊ぶと僕の頭は楽になる。何も考えなくてもいい。ただ僕は状況を見てクリックする。

艦これは、いわば、ドラクエにおけるレベル上げだけを永遠と遊ぶゲームである。

もちろん、いろいろな要素がある。けれど、プレイ時間の9割はレベル上げである。

効率の良い悪いはある。課金・無課金の差はある。

でも、それにしたって基本は時間をどれだけ費やすかが重要なのだ。

 

僕はウイスキーをちびちびとやりながら艦これをする。

 

今、僕は幸せだろうか?

 

画面の中で美少女たちが戦い、笑い、傷つき、そして成長している。

僕はそれを見てウイスキーを飲む。何も考えなくてもいい。幸せだ。

結婚なんかしなくてもいい。彼女なんかいなくてもいい。というか、無理だし。

僕はこうやってウイスキーをちびちびやりながらゲームをして楽々したい。

そしてお金を貯めて、楽々な老後を迎えたい。

親は泣くかもしれない。でも、そんな親もいずれ亡くなる。

 

僕の人生は僕のものだ。親不孝かもしれないが。

 

育てようとしていたキャラクタのレベルが上がる。

クラスチェンジが出来るレベルに達する。僕は嬉しくてウイスキーを追加してしまう。

 

今、僕は幸せなんだ。

幸せっていうのは、こういうものなんだ。

 

 

耳が吹き飛ぶような爆音が断続的に聞こえ、同時に、コンクリートの壁に次々と穴が空いていく。

僕とクランは身体を伏して嵐が過ぎるのを待つ。

外から民兵たちの怒鳴り声が聞こえる。

 

国連軍の軍用ドローンが今日も僕たちの街を蹂躙している。

 

ドローンは熱量のある動くものを撃ち殺そうとする。

ドローンの前を走ろうものなら次の瞬間には肉の破片になっている。

一番賢い方法はこうやって伏して動かないことだ。

 

動かない限りは熱量変位がなく、すなわち、狙われない。

 

民兵たちが火炎瓶を投げつける。

ドローンは火炎瓶を撃ち抜き、拡散した火種に向かって無駄撃ちを続ける。

だいたい30秒も撃てばオーバーヒートし、冷却に30秒を要する。

 

その間に金属バットで殴りつけるというのがドローン除去の定石である。

 

ガキン、と硬い音がし、直後に腹に響く銃撃音が聞こえ、そして、男の悲鳴が聞こえる。

金属バットで壊すのにはコツがいる。どんなコツなのかはよくわからない。

伝承される前にドローンの餌食になってしまうのだ。

 

クランは震えている。

 

「いつまでこんなバカげた日常が続くんだよ……」

 

国連軍はテロリストと非テロリストの区別がつかないことを知っている。

というより、非テロリストであっても、次の日にはテロリストになっていることがあるのだ、この国では。

身も蓋もない言い方をすれば、僕たちは全員、先進国を憎んでいて、いつ本当のテロリストになってもおかしくない。

だって、あいつらは僕たちを奴隷のように扱い、虐げ、挙句の果てにはテロリスト扱いする。

憎まない理由が何一つない。

 

そして、だからか、こんなドローンを毎夜送り込んでくる。

 

今、僕は幸せだろうか?

 

まともにご飯を食べてない。いつ撃ち殺されるかもわからない。

財産も安定した仕事も水も食事もなにもない。病気なんかしたらそれは死を意味する。

 

クランが僕にしがみつく。

 

僕はクランを守りたい。

でも、そんなのは言葉だけだ。思いだけだ。

 

ドローンが鈍い音を立てて旋回する。

時折発砲する。その瞬間、世界全体に稲妻が走るみたいに明るく光り、凄い音が鳴る。

 

そしてその音が鳴るとき、大抵、誰かが死ぬのだ。

 

こんなことになんの意味があるんだ?

 

本当のテロリストはどっちなんだ?

 

僕はクランを抱きしめながら、睡魔に襲われる。

次の日になればまた道端に沢山のなきがらが転がっている。

知っている顔もちらほらいるんだろう。

 

クランが寝息を立てる。

僕も眠る。

 

今、僕は幸せだろうか?

 

2日目 良い夢を

子供の頃、大人は魔法使いのように見えた。

 

トランプを重ねて塔を作っている僕の遥か遠くで超高層ビルが建築されている。

僕が息を切らせて駆けっこをしている横で新幹線が時速300kmを超えて疾走している。

僕がクレヨンで汚い絵を描いている横にはiPadがあって、それはただのガラスの板のようにしか見えないのに写真のような画面が映り込んでいて、しかもそれはタッチすることで操作できるみたいだった。

 

大人はなんでもできる。

大人になれば僕もあんな魔法が使えるようになるのかもしれない。

 

ワクワクするような冒険をして、映画みたいに格好よく『悪いやつ』を倒して、痺れるほど美しい絵を描き、音楽を奏でる。

そして、可愛くてしっかり者の女の子と結婚して、幸せな家庭を作り上げる。

 

 

リトマス試験紙というものがある。

それはpH値を測るために使われる。酸性かアルカリ性かを色で判別することができる。

 

クリスマスにおけるサンタさんの存在をどう認識するか、それはある意味、リトマス試験紙である。あるときピタリと子供に貼り付けられる。

 

でも、どうなんだろう。

子供の成熟度をそれによって測ることは本当に可能なのだろうか?

 

身も蓋もないことを言えば、子供は初めからサンタさんを信じていない。

サンタさんの物語は初めからドラえもんの物語と同列に扱われている。

 

もちろん、実際には居てほしい。ドラえもんと同じくらい、居てほしい。

けれど、それが大人の作った物語であることは初めから知っている。

もっと具体的に言えば、サンタさんはメタフィクションだということを知っている。

 

子供は大人に試されている。

サンタさんを早期に否定すればそれは可愛げがないと思われることを知っている。

だけれど、あまりにもサンタさんを信じているフリを続ければ心配されることも知っている。

大事なのは一番プレゼントをもらえる効率が高いのはどのあたりかである。

ポケモンの新作が欲しいということをお父さん(サンタさん)に如何にして伝えるかに苦心する。

 

 

サンタさんが本当に居ればいい。

ディズニーの夢の国が本当にあればいい。

みんな幸せで平和な瞬間が本当にあればいい。

 

大人が魔法を使って、世の中が豊かに幸せになればいい。

 

僕は『このくそったれな世の中』とか『クズみたいなおっさん達がのさばるくだらない社会』とかそんなことを言ったりはしない。

そんなことをエフェクターを噛ませて歪ませてアンプで増幅させたギターを背景に絶叫してみたところで何もならないことを音楽の歴史の中で知っている。

 

電車の中にいた、疲れ切ってよれよれになったおっさん。

目に光がなく、泣きそうな顔でビールを飲む。するめイカを噛みしめる。

太っていて、顔も脂ぎっていて、薄い髪の毛を繊細に撫で回している。

 

あれは、僕だ。

 

直感する。

あんなおっさんにだけはなりたくない、とか思っていても逃れようがなく、あんなおっさんになる。

あんなおっさんになるのは社会が悪い、システムが悪い、と言ってみたところで、どうやら紀元前の時代から同じことが同じように言われているようであり、分が悪い。

 

ちなみに、紀元前から言われている『定型文』は下記のような言葉があるらしい。

 

・最近の若者はなってない。

・最近の若者は頭を使ってない。勢いだけしかない。

・社会のシステムが良くない。

・政治が悪い。

・結婚ってのは、我慢なんだよ。良いとか悪いとかではないんだよ。我慢なんだよ。

・おっさん達が悪い。

 

話を戻す。

子供はバカじゃない。幼稚でもない。大人にはうまく説明できないけれど、サンタさんもディズニーもメタフィクションであることを知っている。

そして、大人が魔法使いじゃないことを知っている。信じたかったけれど。

 

信じたかったけれど、大人は魔法使いじゃないことを知っている。

 

 

メタフィクションとは何か。

 

例えば、物語の中のキャラクタが突然こんなことを言う。

 

「あんた、この水着、着なさいよ。たまには読者サービスしないとね」

「ど、読者って、なんのことですか!?」

 

物語の中のキャラクタが、これが物語であることを意識している。

この世界が結局はタバコを吸いながらパソコンを触っているおっさんの脳内世界であることを知っている。

紙に染み付いたインクの染みのパターンであり、パソコンのメモリ内の電位差であることを知っている。

知っている、というより全て単なる自作自演、人形劇であることに作者も読者も自覚的であること。

 

桃太郎がキジに吉備団子を食べさせながら言う。

「これって結局、大昔からサラリーマンの構図があったってことだよな」

 

ハルハラハルコが予告で早口に言う。

「まあ結局これアニメだからなんだっていいんだけどね。次回、メディカルメカニカの手が動く。いや動かない。どっちでもいいや」

 

サンタさんはいない。

昔はいたかもしれない。

でもチバユウスケが歌ったように、サンタクロースが死んだ夜は既に遥か昔のことになる。

 

サンタは死んでいる。

お父さんはポケモンの新作をamazonで注文している。

僕は枕元にポケモンの新作があることを期待する。

 

どんな風に振る舞えばいいんだろう?

ありがとう、サンタさん、なのか。

ありがとう、お父さん、なのか。

 

どっちにしてもお父さんは寂しげな顔を見せるに違いない。

 

 

ああ、僕は。

 

ドフトエフスキーの小説をなぜか思い出す。コンビニの本棚の前で。デリヘル嬢を待っている。東京で。

東京という大雑把な言い方で。僕はいつしかデリヘル嬢を呼ぶようなおっさんになっている。

新幹線の中でビールを煽り、泣きそうな顔でiPadを撫でるおっさんはやっぱり僕だった。

ひときわ目立つ派手な容姿のデリヘル嬢が車から降りてきて、その沈んだ表情を僕は見てしまう。

目印に黒い帽子をかぶっていた僕はそのままコンビニの出口に歩く。デリヘル嬢は僕を見て少し笑う。

僕はそっと手を差し出す。僕が出来ることはあまりない。ただ、親切にやさしく出来ればいいなくらいしか、ない。

 

雨が降っていた。細い針のような小雨が東京に刺さり続けていた。

結局、僕はこの人生で何がしたかったのだろうか。道半ばにして殆ど忘れてしまった。

絵が描きたかった。漫画が描きたかった。小説が書きたかった。ピアノが弾きたかった。

 

幸せに生きたかった。

 

彼女の手は冷たかった。東京の街はあまりにも人が多くて僕らの存在は統計的にキャンセルされていた。

ホテルまで歩く間、僕らは天気の話とフィギュアスケートの話をした。

僕は羽生結弦くんの素晴らしさをしゃべった。彼女はどうでもいいみたいだった。あんまりテレビは見ない、と言った。

 

ああ、僕は。

 

サンタはいない。ドラえもんもいない。

2万5000円を払う。それがスーパーファミコンの定価と似ていることをなぜか思い出す。

 

彼女は柔らかく、そして、温かく、よそよそしく、メタフィクションだった。

 

ゴダールの映画のように、様々な記憶の断片が挿入される。

白黒でカメラがぶれて、それはベトナム戦争の従軍記者の回したフィルムだった。

 

僕と彼女はホテルを出た。

僕は射精しなかった。できなかった。僕は演技できなかった。

 

僕は何がしたいんだろう。

絵が描きたかった。漫画が描きたかった。小説が書きたかった。ピアノが弾きたかった。

でも、机の前に座り、白紙を用意してペンを持っても、僕は何もできない。

電気屋さんの電子ピアノで、ワンフレーズを弾いて、恥ずかしそうに逃げていくことしかできない。

 

 

いつしか僕は大人になっていた。

魔法を使う側になっていた。

大人になり、確かに、ちょっとした魔法は使えるようになっていた。

 

ちょっとした暗算が出来るようになっていた。

なぜ空は青いのかを理系っぽく説明することが出来るようになっていた。

ちょっとした絵程度はさらさらと描けるようになっていた。

ちょっとした曲程度はピアノで弾けるようになっていた。

会社で設計した製品が世の中に販売されるようになっていた。

 

けれど、僕自身は全然、大人になった感じはしなかった。

もちろん、外観はおっさんだった。年齢も若くはなかった。

 

魔法のような建築物の基礎杭が短いとかで揉めているニュースを見て、自分ごとのように思えた。

テロリスト達が事案を起こすニュースを見て、自分ごとのように思えた。

月曜日に電車に飛び込む人たちを見て、自分ごとのように思えた。

 

結局、大人は魔法使いでもなんでもない。

結局、サンタクロースもドラえもんもいない。

 

仕事も人生も上手くいかず、どこかで嘘をついて、ごまかして、気持ちの悪い笑い方をしている。

最新のテクノロジーを駆使して女性の裸の画像を見たりしている。

 

いつしか新幹線に乗って、嘘だらけの日程表を泣きそうな顔で見ながら、缶ビールを開けている。

コストパフォーマンスに優れているスルメイカをチョイスしている。

ベルトがきついから緩めている。

窓に映る自分の顔が典型的なおっさんの顔になっている。

 

そんな自分を若者が怪訝な顔で見ている。

でもな、お前らもいずれわかる。

お前らもいずれ僕になる。今を楽しんでおけ。

 

趣味も興味も失う。秋葉原に来たって何も心が踊らない。

ファミコンを見てもメガドライブを見てもPC-98を見てもMSXをみてもX68000を見ても、ああ、そうだった、これは懐かしいのかもしれない、としか思わない。

僕はオタクだ。なのにオタク的なものに興味を失っている。

日本で一番大きなゲームセンターに行く。

確かに、いろいろとある。でも、それだけだ。

まるでインターネットをしているみたいに、画像だけが通り過ぎ、心に火がつくことはなかった。

道にメイド服を着た少女がいた。ティッシュを受け取る。

僕はまるで、こんなのは教育に悪い、誠にけしからん、と苦虫を潰した良識派のおっさんのような顔で歩いている。

 

いつしか僕は立派なおっさんになっている。

 

 

子供の頃、大人は魔法使いのように見えた。

 

僕は夢の中でだけ会える友達と空を飛び回っていた。

いつしかその友達のことを忘れてしまうだろう、と大人は僕に言った。

サーカスのテントの中のような極彩色でちょっと不気味な空間の中でピエロの顔をした大人は言った。

 

大人はね、君。

大人はね、君、ズルいんだよ、僕みたいにね。

 

ピエロはそう言い、ウイスキーの瓶をポケットから取り出す。

ピエロの背景に大きなディスプレイが浮かび、そこには顔のない少女たちが映し出される。

大人はね、君のような心を、忘れてしまうんだ。

なぜならね、君のような心ではこの世界で生きていけないからね。

 

そしてピエロは赤い帽子をかぶり、白い付け髭を顔につけ始める。

 

「さあ、仕事をしよう。君は何が欲しい? おっと言わなくてもいい。知ってるさ」

 

そう言ってピエロはamazonの箱を開く。

 

 

大人は魔法使いではない。

むしろ、魔法を失ったのだ。

 

そして僕も大人になり、魔法を失った。

 

たまに夢の中でだけ思い出すことがある。

子供のときには身体の中にあった魔法の片鱗を。

 

大人は魔法使いじゃない。

そして僕もまた魔法使いじゃない。

 

でも、かつては魔法使いだった。

あるいは魔法を信じていた。

 

だから、せめて、夢の中だけは、魔法が使えてもいいじゃないか。

 

せめて、夢の中だけでも。

それが儚い夢だったとしても。

1日目 振り出しに戻る。

リセットしたので初心に帰ることにする。

 

禁欲・禁酒を続けて、わかったこと

・禁欲、禁酒を意識し続けることは、欲と酒を切望し続けることに似ている。

 →酒を飲まない、酒は毒だ、酒は怖い、酒はこんなに危ない……そう考えれば考えるほど酒のことばかり考えてしまう。これはおそらく本当の解決とは程遠いのではないか。

 

・何かを『しない』ことを維持することで新しく生まれる何かはない。

 →要は、(悪いことを)『しない』ではなく、(良いことを)『する』ほうがいい。

  禁欲禁酒はある意味やって当然のことであって、そこから更に『何かをする』ことが重要。

  『禁ラーメンブログ』を考えれば、ラーメンを食べないことはもはや当たり前であって、その上で何をするかが重要だ。

 

 今日はラーメンを食べなかった。

 今日もラーメンを食べなかった。

 今日もラーメンを食べなかった。危なかったシーンがいくつかあった。

 今日だってラーメンを食べなかった。

 今日、ラーメンを食べなかった。うどんは食べた。

 

 こんなことを書き続けていても意味がないし成長もない。

 

・禁欲禁酒自体を目的にしてはならない。

 →禁欲禁酒が人間の人生を救うわけではない。

  うまくいっても、借金を返してプラスマイナス0になっただけに過ぎない。

  結局、その次がなければまた借金地獄に戻るだけだ。

  そしてそれはとても簡単に転がり落ちてしまう。

 

今のところの結論

禁欲禁酒ブログを始めるまで、禁欲禁酒ブログの業というか、『呪い』はわからなかった。

禁欲禁酒ブログは単純に禁欲禁酒したことを報告するだけではない、ということは実際に書き始めてみないとわからないことだった。

 

単純に報告するだけで新鮮で面白いのは初めの3日間くらいなものだ。

4日目以降はわざわざ自分の欲望を喚起させながら書いたりして、かえって逆効果になってしまっている。

僕の場合は自作漫画や変な妄想を書き散らしたりして、結局、何を訴えたいのか、わけのわからないブログになっていった。

そして挙げ句の果てには普通にリセットしたりして、格好悪いことこの上ない。

 

正直なことを書くと、禁欲・禁酒は大した敵じゃない。

こんなのは『出来るだけ左手を使って生活しよう』みたいな縛りプレイに過ぎない。

そして、利き手ではない左手で生活してたどたどしい感じが楽しいのはほんの最初だけだ。

 

一番大事なのは、結局のところ、僕は何がしたかったのか。

一番初めに何を考えていたのか。僕は僕の人生を立て直したかった。

だから『自分自身の悪い点』を直そうとした。

 

それが、たまたま禁欲禁酒だっただけだ。

 

結局のところ、僕は自分自身に勝ちたかった。

 

怠けたい自分。酒に溺れたい自分。欲に溺れたい自分。何もしたくない自分。

考えたくない自分。死にたくない自分。頑張りたくない自分。

 

そういう自分自身をやっつけたかった。

重く、動きの鈍い、情けない、負け癖のついた自分を過去のものにしたかった。

 

禁欲・禁酒はその一部に過ぎない。

このブログで失敗したのは、禁欲禁酒にフォーカスを当てたがために、それ以外のダメ要素が全て見逃されたことだ。

それが原因で仕事も人生もうまくいっていない。

禁欲禁酒がある程度できたその代償として、それ以外が全部ダメだった。

 

すなわち。

 

本当の敵は欲でも酒でもない。

本当の敵は自分自身だった。

自分自身のダメさを解決するために欲と酒だけを悪者にしても何も解決しない。

そんなものはただのちゃちなチンピラに過ぎない。

巨悪がいる。本当の悪いやつがいる。それが、実は自分自身だった。

 

では、それをどう表現すればいい?

どうすれば、本当の意味で人生を変えることができる?

 

まだ上手く言葉にできないが、『そこ』に焦点を当てるべきだ。

そしてそのために、その課題を解決するためにこそ、このブログは作られたのだ。

リセット 飲酒ブログ

送別会に参加し、飲む。
送られる方も送る方も飲まざるを得ない。

僕も飲んだ。
リセットだ。

久しぶりの酒は懐かしかった。
懐かしい快感と不快感があった。
アセトアルデヒドがまた身体中に回っていく。
そいつらは街という街に火をつけ、善良な住民達をコロコロして回る。
テロリストというより、虐殺者達だ。

こんな奴らの入国を認めたのは僕だった。
懐かしい彼らは僕の姿を見ると、まるでずっと昔からの友達だったみたいにフランクに振る舞い、ハグした。
そして僕に根拠のない多幸感や鎮静感、高揚感を与えてくれる。
そして僕たちの国を焼き尽くそうとする。

何杯飲んだだろう?
矢継ぎ早に注がれるビールを飲み、ビールが飽きればカクテルを飲み、最後に熱燗を飲んだ。
飲めば飲むほど冷静になったように感じ、実際はその正反対の様相を見せる。

気付けば酩酊。
不快感、吐き気、度を超えた満腹感、頭痛。
街は焼き尽くされ、あらゆるものが汚染され、治安が最低ラインを割る。

目の前の2メートルくらいが世界の全てになる。
悪い人に連れられ夜の街に行き、気が付いたときにはなぜか女性の太ももとニーソックスの隙間に欲望を挿入していて3秒後には白濁を射出している。

その瞬間に嗅覚が復活し、周りの酷い臭いに気付かされる。
まがつた鉄砲玉のやうに僕はトイレに走りこむ。

アセトアルデヒドたちが少しずつ分解されていく。
僕は駅をホームでこんな文章を書く。
小さな癌を身体中に発生させながら。
ただ、それらは普通なら免疫系によって駆除される。
ただし、アルコールによって免疫力が下がっている場合は別だ。
小さな癌はそこに根を張り、少しずつ成長していく。
いつしかその周辺組織の機能を奪っていく。

僕は妄想する。

酒とタバコを愛する一人のおっさんが癌で倒れる。

2ヶ月間入院し、点々と存在する癌に放射線が照射される。
しかし癌は既に身体中に転移していて、なす術もなくなり、おっさんは退院する。

ここまでくると、医者は酒もタバコもいいんだ、と言う。
好きなだけやってくれ、と言う。

おっさんは震える手でタバコを吸い、2015年のインターネットを見る。

ノスタルジー。
それはGoogleの有料サービスの名前だ。
Googleがインターネット上にばら撒いた情報収集ロボットは、その全ての記憶を年代別にアーカイブしている。

2015.12.01のインターネット
2015.12.02のインターネット

それらは膨大な馬鹿げたデータに感じられ、維持も管理も無駄だと思われるかもしれない。
でも、実際は全て差分に過ぎず、大したデータ量ではない。

例えば今日のあなたを定義するために全ての物質を再現する必要はない。
昨日のあなたにちょっと足すか引くかすればよい。

ちょっと足しすぎて、あるいは、引きすぎて、おっさんはおっさんになった。
アルコールのせいでぼろぼろになった肝臓はまるで掘り出されて枯れた木の根っこみたいに見える。

2015年のおっさんの痕跡がインターネットにある。

まだ元気で生意気なことばかり書いている。
どんなに疲れても、一晩寝れば全て回復する。
そんなゲームみたいなドラクエみたいな生活が人生だと勘違いしている。

窓の外はいつも明るいと勘違いしている。

耳の根元がズキズキと痛む。
免疫系に癌が転移していると医者は言っていた。
なんのことだか、さっぱりわからないが。

思い出。木造の校舎。あの子の笑顔。
でもそれは本当に自分の記憶なのだろうか?

インターバルにコカコーラを飲みながらラブホの窓から外を見ると、遠くの山に複数のライトの点滅が見えた。
あれは何、と彼女に聞くと、あれは原発だよ、と言う。

あれがパカパカ点滅している間は問題なく稼働しているらしいよ。

この街の人たちは、昼夜、あのライトを気にしている。
あれが消えたとき、急いでクスリを飲まないといけないのだ。

僕は定期的な点滅を繰り返す、そのライトをぼんやりと眺めている。

でも、これも、本当に自分の記憶なのか?

心拍モニターが点滅する。
その横に3種類の数列があり、最高血圧最低血圧、想定残寿命だ。

最後の数列はショッキングな内容であり、マスクして不可視状態にする人も多い。
僕はちゃんと見る。
度胸があるというより、もともとの信憑性を疑っている。

想定残寿命は身体のコンディションによって著しく変動する。
タバコを吸った日にはマイナス側へ振り切った時もある。

あなたは後マイナス3日で死にます。

すなわち、もう死んで3日経っている。

デッドマン。
特にこれらの話にはオチもテーマも何もなく、僕は電車に乗り込む。

かすかに精液の匂いがして、僕は再び気分が悪くなる。

38日目 こだわりがなくなる日

執着を無くすことが大事、という言葉を信じるフェイズは存在する。
仏教、坐禅、瞑想、そういうパワーコードとセット販売されることが多い。

藁をも掴む思いで執着を無くす。
それなりに効果があり、どこかに着地する。
そこに家を建てる。
しかし、その家はあっという間に狼によって破壊される。

この世界は狼で出来ている。
狼に勝つためには、更に狼らしい狼になる必要がある。

いえいえ、狼なんてあんな穢らわしいものになるなんて真っ平です、私は喜んで羊になります、
そう言って飲み会を途中で退座した彼の家は狼によって焼き払われてしまった。

うどんよりそばが好きだ、うどんなんて○○○だよ、と暴言を吐いた彼はその瞬間に世界の半分を敵に回す。
もう一方の半分は彼の死に様をウォッチするハイエナになる。
彼は混雑して散らかるTwitterを見て、困難な状況を知る。

時の総理大臣が彼をRTし、うどんも美味しいよ、などと言うものだから、彼は夜も眠れない。

出社し、直後、常務に呼ばれ面接室に入っていく。
これはお前のアカウントか? と聞かれ、ぷるぷる震えながら頷く。

業務の引き継ぎをする。
うどん発言で退社。
退社の理由。うどん。

帰り道、彼は狼になる。
禁じていた酒を飲む。
回転寿司屋で飲む。ハイボールを注文する。
250mlくらいの小さな缶が出て来て、これが400円。
茫然としながら、炙りサーモンとマグロを注文し、芋焼酎を注文する。
iPhoneのロックを解除。Googleのセーフモードを解除。
イメクラを予約。チカンデンシャのシチュエーションで予約。
アラームが鳴り、炙りサーモンが届く。
身体が浮遊している気分。地面に脚が付いていない気分。
減塩醤油を掛け、いや、バカ言うなと濃口醤油をかけ直す。

狼になる。

ハイボールを2秒で飲む。
耳が遠くなる。ポケットに拳銃が入っている気分になる。
三島由紀夫。この、拳銃の重さ。現実の拳銃の重さ。
この重さが俺を自由にする。
芋焼酎を飲み、むせる。マグロが届く。
布の匂い。洗いたての水っぽい匂い。
女性に触り、3秒で飽きる。飽きたことが女性にも伝わる。
柔らかさが興奮を誘わない。発情期ではない犬は発情しない。
駅のホームではてなブックマークを見る。
うどん発言で退社、が怒涛の人気を集めている。
これが自分のこととは思えなかった。

そして、あっという間に消費されて消えていくのだろう、それに救いと寂しさを感じる。

Twitterアカウントを消し、はてなブログアカウントを消し、amazonアカウントも消す。
ホームのベンチで。明日から無職になる。
うどんで無職。圧倒的なスピードで無職。

俺は狼になる。
ポケットに手を入れる。
拳銃を取り出す。
でも、実際にはそれはただの水平器であり、彼はホームのベンチの水平度を測定する。

傾き、1度。

すっごくどうでもいい。
彼は狼になる。禁欲や禁酒とは正反対の酒池肉林に存在する。
ハイボールと、芋焼酎と、制服姿の女と交わった。
まさに狼らしい狼だ。

全ての束縛から逃れ、明日からは完全なる自由。

傾き1度。

電車がホームに入ってくる。
彼は線路に飛び込むことを考える。
考えるだけだ。でも、背後から声が聞こえる。

お前は腰抜けか?

今、なんて言った?

お前は腰抜けか? って言ったんだ。

腰抜けだと?

腰抜けだ。お前は。

腰抜けだなんて、言わせない。

そんなマイケルJフォックスのような顔で電車に乗り、空いてる席に座ってはてなブックマークを見る。

旦那の自転車を断捨離しました。

そんな釣りエントリーを見て彼はiPhoneの電源を落とす。

どうでもいいや。
なんでもいいや。

投げやり。こだわりも何もなくなる。
執着もなくなり、ただの骨と皮になる。
以降の彼を知るものは誰もいない。

そんな彼が僕のMacBookAirを見て、執着だ、と言う。
僕はまだMacBookAirの復活を夢見ている。
死体に花を添え、怪しげな薬を塗り、呪文を唱えている。

もしかしたら、復活するのではないかと。
まるで眠りから覚めたように、からっと起き出して、いつものように輝き始めるのでないかと。

執着だ。

彼は笑う。

死んだ母親を弔うことなく、アパートの一室に寝せ続けた少女のような目で笑う。
母親が死んだことを信じたくなく、物理的に消えても信じたくなく、誰にも相談できずにいた少女のような目で笑う。

僕はうどんを食べる。

僕だって同じだ。
こだわりなんてない。
事実なのに信じたくないこともある。

MacBookAirは動かない。


37日目 沈黙のパソコン

会社から帰ってきて、天地逆転しているシュールな姿のパソコンに電源を入れる。

ログイン画面が出る。
しかし、キー入力を受け付けない。
全てのボタンに反応しない。

シャットダウンし、また、ひっくり返す。

どうする。
どうしよう。
バックアップなんてしていない。
あのデータもそのデータも取り出せない。
直近のことで言えば、年賀状が書けない。

どうする。
新しいパソコンを買うか?
また一から環境を作り直すのか。
もう、インストールCDの場所も検討付かないものも多々ある。

どうする。
どうしようもない。
酒を飲んでも解決しない。
寝よう。
寝るしかない。


ありとあらゆるパスワードのメモが壊れたパソコンの書類フォルダ内にあることに気付いた。
iTunesevernoteも何もかも。
これは、なかなかきつい失敗だ。

とりあえず、乾燥剤を下に敷き、天地逆転したパソコンをタオルで包む。


気になって、立ち上げてみる。
ついに立ち上がらなくなる。

こうなると、もう、寝るしかない。